真っ赤な手の嘘つき娘は聖女でした〜この国を捨てて、他所の国を救います〜

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もともと口数の多い人じゃなかったから、傍目からみれば今の生活と大して変わらないのだろうけど、人がいるのといないのでは、大きな差があるのだ。 何をするのも自分だし、しなければ後悔するのも自分。 喋る相手は布と染料、そして……この川。 「今日もキレイだね」 澄んだ水面と清流に話しかける。 サラサラといつも通りの返答があって、挨拶のような会話は終わりだ。 これで満足した私は、まず川に手を浸す。 手にぶつかる水流が、ギチギチの筋肉を押し解してくれて、とても心地よい。 ふうーと息を漏らすと、水の流れに逆らっているお魚さんと、目が合った気がした。 ……気がしたというより、目があってる? 白っぽい瞳が、私をじっと観察しているような。 何なのだろう? ピチャリ――。 首を傾げると、そのお魚はどこかへ行ってしまった。 小さな水音にびっくりしたらしい。
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