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でもさっきの騎士の顔がちらついて……。
私は言い訳を考えた。
今日は行商人さんがやって来る日だからと。
人の命と、私の生活。
仮に今日を逃したとしても、行商人さんはまた、2週間後にやってきてくれる。
どちらが重いのかなんて、分かり切ってる。
でも私は、反対の道を選んだ。
「嘘つきの染め物なんかいらないね」
「山に住んでるからって、俺らまで白い目を向けられたぜ、もう来るんじゃねえ」
「もうアンタらには頼まないよ。麓の染師は真っ当で正直だからね」
かつてそんなことを言われて、私たちは異国の行商人さんとしか、売買をできなくなった。
この町の誰かに相談しても、たぶん騎士さんと同じ反応をされるだろうから。
あの騎士さんが忘れてないってことは、この街の人達もきっと、忘れてない。
誰も耳を貸してくれないだろうから。
私は山頂へと登っていった。
◇◇◇
「こんにちは、降りそうですねえ」
「そうですね、このぶんなら夜からかと」
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