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「うむ、ん?その手は……新しい染料ですかな?」
行商人さんは、背負子を下ろして、私の手を不思議そうに見つめている。
「真っ赤な……まるで血のようだ。初めて見た色合いですな。うむ、面白い」
商人のさがというやつか、手を見つめながら、何か別のことを考えているようだった。
「実はこれ……」
私は、この手の色について相談することにした。
私と父の事情を知っていても、こうして付き合いを持ってくれる人だから、きっと信じてくれるはずだと。
みんなを助けたいとか、そんな、高尚な理由ではなくて、ただ認めてもらいたかっただけかもしれない。
商人さんに話すと、私も驚くほどに、スラスラと言葉ができてきた。
話すこと自体久しぶりだったから、町の方ではどもったり、まとまりがなかったりしたけど、ここでは要点と私の危惧することを、きちんと伝えることができた。
行商人さんは全てを聞いて、顎に手を当てた。
「……もしかすると、アンデット」
ドキンと胸が跳ねた。
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