村人

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「この村の事を調べたんだ。そしたら10年前、荒熊という家が熊に襲われ夫婦共々死亡っていう記事があった」 「荒熊……確かお婆さんがいっていましたね」  それであの家は空き家になってしまったのか。それにしても村人たちの反応が変だった。ただ単に熊が出るから行くなというなら分かる。でもそんな雰囲気ではなかった。まるで知られたくない秘密があるような。 「夫婦には息子がいたようだ」 「じゃあ息子さんだけ助かったんですね?」 「いや、行方不明だそうだ」 「行方不明? じゃあ跡形もなく熊に食べられちゃったとか?」 「それが家に息子が住んでいた形跡はなかった。しかし戸籍はある。だが連絡はつかない」 「山の生活が嫌で家出でもしたんでしょうか」 「当時息子は15だった」 「じゃあ中学生だ」 「しかし学校には通っていなかった」 「病気だったんでしょうか」 「受診履歴はない」 「おかしいですね……」  嫌な想像が浮かんだ。まさか両親が息子を? 「何処かに埋まってるかもしれないな」  ディレクターがポツリと呟いた。掘り返す気満々な目をしていた。いや、どうせディレクターはカメラを回すだけで僕が掘らされるんだろう。  それでも細い山道はUターンするほどの道幅もなく、前に進むしかなかった。道はどんどん細くなり、ガードレールもなくなった。既にアスファルトさえ敷かれていない砂利道だ。こんな所で荒熊家はどうやって暮らしていたのだろうか。 「お、あれじゃないか?」  藪の中に屋根が見えた。
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