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「寝てるところを襲われたみたいだな……」
想像しただけで吐き気がする。
「もう帰りましょう。誰もいない事は分かったし、こんなの放送できないですよ」
「うちの番組じゃ無理だな。でも衝撃映像でなら使える。ついでに幽霊が出たらホラーでも使えるぞ」
熊も幽霊も勘弁だ。こんな場所はさっさと退散するに限る。
チリン……
「ん? 何か聞こえなかったか?」
チリン……
「鈴、でしょうか」
小さくて聞き取れないほどの小さな音だった。どこかに風鈴でもあるのだろうか。
チリン……
「風鈴とは違うな。もっと、本物の鈴っぽい音だ。猫でも飼ってたんかな」
「飼ってたにしても、もう10年も前の事です。もうその猫だって……」
「下から聞こえないか?」
「下?」
こんなボロ屋に地下室があるなんて思えない。でも確かに地面の下から聞こえるような気がする。
「探すぞ」
「え?」
「猫が出入りできる場所が地下にあるって事だ。何やらお宝の匂いがしないか? 山の中での生活はお宝を隠し守るためだったのかもしれない。飼い猫が主亡き後秘宝を守り続ける、これはドラマだ」
恐怖と期待の入り混じった顔で、ディレクターは家中を調べ始めた。
仕方なく僕も捜索をしたが、地下への通路なんて見つからなかった。そしてディレクターが言っていた通り息子がいた形跡もなかった。子供の服も文房具も、何もなかった。
チリン……
捜索中も時折鈴の音が下から聞こえてくる。もしかしたら地下への入口は屋外にあるのかもしれない。そう思った僕は一旦外へ出た。
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