2人が本棚に入れています
本棚に追加
異界の病院
「先生、うちの子、この子なんですけど」
母親が男の赤ん坊を抱いている。
「どうされました」
「あの、あのーー」母親は勇気を出して医者に告げた。「この子、逆なんです」
「逆?逆って、何が?」
「おしっこの穴からうんちが、うんちの穴からおしっこが出るんです」
驚愕する医者。
「何ですと」
「異常ですよね。おかしいですよね。でも、かわいい我が子です。何とか治してください」
「うーむ」扼腕する医者。「入院させて、検査して、おそらく手術ですな。尿道と腸がおかしな具合になっているにちがいない」
「治りますか」
「うむ」医者は力強くうなずいた。「治してみせましょう」
赤ん坊は看護師に抱かれて病室へ。母親は入院手続きのため事務室へと向かった。
医者はカルテに記入しながら思いを巡らせる。
(奇病だ。おしっこの穴からうんちが、うんちの穴からおしっこが出るなんて。治せるのか?私に。だが、治さねば。治してみせねば。私の全能力を結集させ、あの子を救ってみせる)
医者は診察室からトイレに立った。
小便器の前に立ち、ズボンを脱ぐ。後ろを向き、小便器にお尻を向ける。
お尻の穴からじゃあじゃあと小便する医者。
となりの者もそうしている。
そのとなりの者も、そうしている。
最初のコメントを投稿しよう!