異界の病院

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異界の病院

「先生、うちの子、この子なんですけど」  母親が男の赤ん坊を抱いている。 「どうされました」 「あの、あのーー」母親は勇気を出して医者に告げた。「この子、逆なんです」 「逆?逆って、何が?」 「おしっこの穴からうんちが、うんちの穴からおしっこが出るんです」  驚愕する医者。 「何ですと」 「異常ですよね。おかしいですよね。でも、かわいい我が子です。何とか治してください」 「うーむ」扼腕(やくわん)する医者。「入院させて、検査して、おそらく手術ですな。尿道と腸がおかしな具合になっているにちがいない」 「治りますか」 「うむ」医者は力強くうなずいた。「治してみせましょう」  赤ん坊は看護師に抱かれて病室へ。母親は入院手続きのため事務室へと向かった。  医者はカルテに記入しながら思いを巡らせる。 (奇病だ。おしっこの穴からうんちが、うんちの穴からおしっこが出るなんて。治せるのか?私に。だが、治さねば。治してみせねば。私の全能力を結集させ、あの子を救ってみせる)  医者は診察室からトイレに立った。  小便器の前に立ち、ズボンを脱ぐ。後ろを向き、小便器にお尻を向ける。  お尻の穴からじゃあじゃあと小便する医者。  となりの者もそうしている。  そのとなりの者も、そうしている。
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