2人が本棚に入れています
本棚に追加
どうやら私は気を失っていたらしい。
あの後、私は玄関先で目を覚ました。
人形はあの時のまま、丸テーブルに座っている。それでも笑うことも喋ることもなかった。
怖くなった私は、短大に行く前にマンション指定のゴミ置き場に人形を置いてくることにした。
ごめんね。
私は心の中で謝りながら、そっと人形を処分して通学のため駅に向かった。
そして講義が終わり、寄り道する気力がなかった私は、マンションに入る前にゴミ置き場を覗いてみた。そこにはすでに人形の姿はなくなっていた。
私はほっと胸を撫で下ろして、エントランスに入った。そしてマンションのエレベーターに乗り込んだ時だった。
不意に背後から視線を感じた。
私はバッと後ろを振り返ったが、そこには何もなく、エレベーターに備えられた鏡に映るわたしの顔が私を見つめていた。
チンという音がしてエレベーターの扉が開いた。私は足早に廊下を歩き、自分の部屋へと向かった。
そして。
私は足を止めた。
いや、動けなかった。
私の部屋の前。
そのドアの前に人形が座っている。
私は足が竦んで動けないまま、ただ人形を見つめていた。
すると、いきなり人形の首がグルっと動いてこちらを見て、首を傾げて笑った。
お か え り
私は腰が抜けて座り込んでしまったのだった。
【次項へ続く】
最初のコメントを投稿しよう!