2人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日。
私は短大の講義を休んで、人形供養をしてくれるお寺をWEBで検索して連絡をした。
「持参していただければ、いつでもお預かりできますよ」
担当の者、と名乗る人にこういった返事をもらった私は、この人形をずっと手に持って行動するのは怖かったが、一刻も早く手放したい一心で、すぐにそのお寺へと向かうことにしたのだった。
片道一時間強。
電車とバスを乗り継いで目的のお寺へと到着した。
そのお寺は鬱蒼とした林の中にあり、町の空気とは全く違うように感じられた。肌に感じる気温も下がっているようで、少し冷えてきて身震いした。
そして私は少し早歩きになりながら社殿の隣にある社務所に行って、受付の巫女さんに挨拶をした。
「すみません。午前中にお電話しました佐々木と言います。お人形の供養をお願いに来たのですが」
巫女さんは慣れたように頷いて答えた。
「それではこちらでお待ちください。住職を呼んでまいります」
私は巫女さんにお礼を言って、少し離れた所から社殿を眺めて待つことにした。すると、あまり待たずに一人の袈裟を来た男性が現れて、私にお辞儀をしてから声をかけてきた。
「佐々木さんでよろしいですか?」
「はい」
住職の柔和な笑顔にほっとした私は、さっそく人形の入った紙袋を用意して手渡した。
「この中に、その人形が入っています。最近変なことが続いていて怖くて。子どもの頃は可愛がっていたんですけど。こんなことは今までなかったんです」
専門家に会った安心感からか、ちょっと早口になりながら人形について色々と説明をした。住職は笑顔のまま話を聞いてくれて、私の言葉が途切れた時を見計らってこう答えた。
「分かりました。それでは大切にお預かりします。ただ、こういった人形供養は一体一体ではなく、ある程度まとめて行っていますので、そこはご了承ください。あなたのお人形をご供養する際には、こちらからご連絡しますので」
私は肩の荷が下りたように気分も軽くなって、住職に何度もお礼とお願いをしてからお寺を後にしたのだった。
それから一週間が経った。
拍子抜けするぐらい、何もない平和な日々が戻ってきた。
私はまた短大に通って講義を受けたりアルバイトをしたり、また私生活では料理に挑戦したりと、充実した生活を取り戻していったのだった。
【次項へ続く】
最初のコメントを投稿しよう!