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私が幼稚園に通っていた頃のこと。
近所の公園でフリーマーケットが行われていると聞いた私は、母にせがんで連れて行ってもらった。
そこはいつものスーパーと違って、青空のもと色んな品物が並んであって、お店の店員さんもお客さん達もみんな笑顔で、まるで違う世界に来たように感じて楽しい気分になったのを覚えている。
母と手を繋いでお店を眺めながら歩いていると、一つの人形が目に留まった。
ブロンドの髪が美しい、真っ青な瞳が印象的な少女の人形。ヒラヒラのお洋服が似合っていて、とても可愛かった。
その子の目を見た瞬間、私は絶対に欲しいと、繋いだ母の手を引っ張り何度もおねだりをした。
その人形を売っていた店員さんは、そんな私の様子を微笑んで見つめ、少しおまけをして譲ってくれたのだった。
小さな女の子の人形「リリーちゃん」とは、どこにいても、何をしていても一緒に過ごした。
「ずっと一緒にいようね」
私は事あるごとにそう話しかけていた。
それでも私が小学生になると、次第にクラスの友達と遊ぶことが増えてリリーちゃんとはあまり遊ばなくなっていった。
そして高学年になる頃にはタンスの上に飾られて、特別に意識することすら無くなっていったのだった。
【次項へ続く】
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