入学式の少し前の話だけど聞いてくれる?

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入学式の少し前の話だけど聞いてくれる?

僕が生まれ変わったオルストア王国には女性がいない。 前世を思い出すまでは自然にそれを受け入れていたが、今となってはとても不思議なことだ。 だから右をみても左を見ても全て男性な訳で、その代わり生まれてくる男性には女腹体という、男性なのに、子宮があり、出産後のみ乳が張って子供に飲ませる事が出来る、それが女腹だ。 普通の男性よりも小柄で、ペニスもある一定程度から成長しなくなる、が、性的快感は普通の男性と同じくペニスからも得られる、もちろんアナルは女性が持つ膣と同じ役割を果たすため、性的快感を得ると女性のように愛液を滴らすようになる。 僕、アンブローズはこの女腹体で、役割的には女性ということ、つまり、このお腹の中には子宮があるわけだ。 とても不思議。 だから僕の母様も男性だ。 うちの家族は僕を除いて父様も兄様達もめちゃくちゃイケメン、母様はイケメンというより、綺麗って言った方が合ってるのかもしれないけど、とにかく僕は両親の血を受け継いでいないんじゃないかってほど似ていない。 前世の影響もありそうだけど…。 でもだからと言って愛されていない訳じゃない、逆にいつも”可愛い、可愛い”と言って育ててくれているし、兄様達は過保護すぎるくらい僕の事が大好きだ。 僕はそんな平凡すぎる顔で満足だ。 この顔だったから、屋敷を抜け出して平民の子供達とも仲良くなれたし、これから訪れるであろう断罪に備えての準備がしやすくなるのも事実だし。 ってな訳で、少し時間は遡って入学式の何日か前の話。 僕は前世を思い出す前から1人で屋敷を抜け出し、街で子供達と遊んだり、持ち出した小遣いで屋台で食べ物や飲み物を手にとって楽しんでいた。 貴族のことをあまり知らない子供達は緑眼を見ても僕が貴族の子供だなんてわからないし、この顔のお陰で、異国から来た移民、ぐらいにしか思っていなかったようだ。 「おばちゃん、おはよう」 「あら、アレン久しぶりだね、おはよう」 「おう、アレンお前ちっとも大きくならねーな」 「おっちゃんもおはよー、ひとこと多いよ!」 「アレン兄ちゃん、また遊んでね〜」 「ルディおはよ、また遊ぼうね!」 街を歩いているといろんな人に声をかけられる、これも人徳のお陰かな、ふふっ。 平民の服に着替え、スキップしながら見慣れた街を歩く。 前世では元々庶民だったからどちらかと言うとここの人達と話したりする方が落ち着くんだよね、僕庶民派だから。 気分よくスキップしていると、遠くから僕の名前を呼ぶ声がした。 キョロキョロしているとその声が近くなって後ろから軽く頭を叩かれた。 「いたっ…」 「な訳ないだろ、軽くしか叩いてない」 「えへへっ、良かった、今からお店に行こうかと思ってたんだ〜」 「そうだと思った、けど、お前いつまでそんな格好してこんなとこ来てんだよ」 「えっ?良いじゃん、そのうち僕もみんなと同じここに住む予定なんだからさ、慣れとかなきゃね」 「慣れとかなきゃね、って、もうすでに慣れ慣れしてんだろ、むしろ俺よりここに馴染んでる」 「あははっ、なら嬉しいなぁ」 「で”アレン”様は俺に何用で?」 「あ、そうそう、ジルベールも学園に行くんでしょ?」 「んーー、俺は商いしていたいんだけど、親父が箔がつくから行っとけって」 「だよねー、なら同級生だからよろしくね、って言いに来た!」 彼はジルベール、豪商の一人息子で、僕の商売相手だ。 この国の商品の殆どはハキル商会、ジルベールの父親が扱っている。 前世の記憶を元に彼と2人で商品化して収入を得ている。 これが平民から貴族に大人気で僕の商品は爆売れ中だ。 僕が平民に化けて遊びに来ていた頃から侯爵家の三男だと知っている、しかも前世の話までしてある数少ない1人だ。 ヒルロースも街にはたまに連れてきてるけど、何故かジルベールとは仲がよろしくない。 ジルベールもヒルロースと同じくらい背が高くて濃い目のイケメンだ。 髪は僕と同じ茶髪。 物語には商人とだけしか出てきてないから、ここまで男前でも彼は攻略対象者ではない。 だから安心なんだけどね! 「同級生でも全然違うじゃないか、お前わかってんのか?お貴族様ってことを」 「わかってるよ、でももうすぐだよ?運が良ければ皆んなと同じ平民の仲間入りだ」 ジルベールは、困った様子で僕の頭を撫でた。 「そんなことになる訳ねーだろ」 「それがなるんだよねー、物語の強制力は馬鹿に出来ないんだから」 「あのヒルロースも攻略対象者?だっけ?あいつが他のやつに構うとは思えねーけどな」 僕は彼の目の前に人差し指を左右に揺らし 「チッチッチッ!僕の言うことは絶対だよ、ジルベール君」 「何がジルベール君だ…まぁ、平民のアレンになったら、俺が嫁に貰ってやるから、大船に乗ったつもりで、断罪されてこい」 ジルベールは優しいやつだ。 僕がこの話をした後、信じてくれたかはわからないけど、いつもこう言ってくれる。 「なら僕は豪商人の嫁だ!平民から大出世だね!!」 ギルドに預けてあるお金でこの街に家を買ってあるし、転生者の夢である『のんびりまったり異世界でスローライフ』がもうすぐ叶う。 家族に会えないのは辛いけど、ジルベールに言付ければ手紙のやり取りくらいは可能だろう。 「そうだ、あの家、一階は何するんだ?」 「んー、考えてることはあるんだけど、今はまだ内緒」 「なんだよ、飲み屋とかか?」 「…僕、断罪されて鉱山送りになるかもしれないでしょ?だったらどう頑張ってもここにも住めないかもしれないからさ。貴族席剥奪くらいだったら考えてる事があるんだよね、ジルベールにも相談するから、その時はよろしくね!」 またジルベールが悲しそうな顔をするから、髪の毛をわしゃわしゃしてニコッと笑った。 「そんな心配そうな顔しないで、そうならない為にこれまで頑張ってきてるんだから、ね?」 そうだ、頑張らなきゃね、こんなところで気落ちしている場合じゃない。 「じゃあ僕それだけ言いに来ただけだから、帰るね〜」 バイバーイと走りながら手を振った。
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