育てがいがあるなぁ……

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育てがいがあるなぁ……

 いや違う……。  僕だって、今まで完全なタチだったのだから、それこそ僕だって動いていい時だってあるだろう。  だからなのか僕の方は半身を起こすと、自分から服を脱ぎ始めるのだ。  とりあえず上半身を脱ぎ、それを床へと放る。  僕の場合には今までタチの人間だったのだから、寧ろ今まで自分から服を脱ぎ捨てる方が多かった。 そこは自分のプライドみたいなのがあるところなのかもしれない。  確かに北山と付き合うと決めた時に、北山がタチで僕がネコと決めたのだから、挿れられるのが、もう僕の方が折れてもいいのだけど、その他については僕がリードしていってもいいっていうことだろう。  だけど今のところ、僕が先に動いていいのは服を脱ぐことだけなのかもしれない。  ネコという立場上、相手の胸を触ることさえ出来ないのだから。  だからなのか僕の方は服を脱ぎ捨てた後は、座ったままで、動きが止まってしまっていた。 「流石は、まだ、ネコではないっていうところですかね? 自分から服を脱いでくれるとは思ってなかったですよー。 流石は元タチだけありますよね?」  そう何だか嫌味っぽく言っているようにも思えるのは気のせいであろうか。 でも北山の方だって、こうさっきとは違い、可愛い感じではなく、今では完全な雄(オス)っていう感じにもなってきたようにも思える。  今まで普段の生活の中では、こうキラキラお目目で見上げるような感じで乙女チックなところもあったのだけど、今では目をギラギラとさせてるような完全な雄なのだから。  そこには一瞬怯みそうになる僕なのだけど、そこは頭を振って、北山に負けないようにするのだ。 「そんな、タチだった御手洗さんのことを今日からは可愛いネコさんにして上げますからねぇー。 何だか、育てがいがありそうなネコさんですよね、御手洗さんって……」  そう言いながら、北山は僕のお腹辺りに腰を下ろしてギラギラとしたような瞳で僕のことを見つめてくる。  そして僕の顎の下に手を置いて、一瞬自分の舌で自分の唇を舐めると、再び俺の舌へと舌を絡めて来るのだ。  そこは僕の方もまた舌を絡め返す。 すると部屋内には水音が響き渡るのだった。  僕の方だってそんなキスというのは慣れている。 鼻で呼吸をしつつ舌を絡め、時には相手の舌をも吸い上げる。  僕達は何分、それを繰り返しただろうか。 そしてこんなに濃厚なキスをしたのは初めてなのかもしれない。  そうネコと付き合う時っていうのは、ネコの方が初めてのことが多いのだから、タチがリードしなきゃいけなうのだけど、今のこの状況っていうのは、二人とも経験者なのだから、これからの行動に何でも濃厚になるのかもしれないということだ。
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