同じマンションがいいです

1/1
前へ
/40ページ
次へ

同じマンションがいいです

「あのー……正確には御手洗さんが住んでるマンションだかアパートにしてもらいたいんですけど……」  そう遠慮がちにというのか節目がちにというのか、気持ち的に僕の事を見上げるように言って来る北山。 そこに再びドキリと心臓の鼓動を早くさせてしまっている僕がいた。  寧ろ今日は心臓がいくつあっても止まってしまいそうな感じに本当に今日の僕と言うのは北山にキュン死させられそうな気分になってくる。 寧ろ、笑顔だけで天国へ連れてかれそうになったのだから、本当に今日の僕というのはいい意味で北山に殺されそうになっているのかもしれない。  しかしもう既に僕のペースではない。 確実に北山のペースに僕は巻き込まれてしまっている。  それでも、どうにか僕は持ちこたえて、 「ぼ、僕と同じマンションですか?」  一応、普通に戻したとはいえ、言葉を完全に噛んでしまっている僕。  本当に今日の僕はキツい。 寧ろ完全に動揺してしまっているのがバレバレの状態なのかもしれない。  動揺しながらもパソコン画面へと視線を向け、どうにか仕事に集中しようとしていると、僕の頭の中に、『僕のマンションの隣の家が空いている』という言葉が浮かんで来た。  それが悪魔の囁きなのか天使の囁きなのか。 というのは分からないのだけど、その頭の中に出て来た言葉をそのまま北山に伝えるのだ。 「僕が住んでいるマンションの隣りが空いてますが、そこで、宜しいのでしょうか?」  そう僕が答えると、北山は、 「だって、不動産屋さんが、住んでる所って、やっぱ、一番条件とかって揃っていそうじゃないんですか? コンビニも近そうだし、駅近とかスーパーとかってありそうだしね。 それに、御手洗さんって、独身そうに見えるので、そういった自分に合った条件の所に住んでそうですし……」  一瞬にやりとしたような表情が見えたのだが、その北山の言葉の方が僕からしてみたら印象に残ってしまったようで、思いっきり自分が勘違いしていたことに気付き、一瞬、頭の中が真っ白になってしまっていた僕。  しかし今の一瞬で、今までの僕の胸の高鳴りを返してくれ。 と思ったのは言うまでもないだろう。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加