襲い受?誘い受?

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襲い受?誘い受?

 しかし、よく考えてみると、お店で案内した人が隣に住んでいるというのは変な感じだ。  しかも、北山様は来月から社会人になるって言っていた。 だから、まだ後一週間位はそのマンションでゆっくりとしているのであろう。  僕は独り暮らしなのだから、朝、出勤前にゴミ出しをやる。 すると、北山も同じ時間にゴミ出しに出てきて、挨拶を交わす。 「おはようございます」  北山の下から目線のとびきりの笑顔にやられながらも、僕の方は、未だにお客様っていう感覚があるのか、 「おはようございます」  と、こう丁寧にお辞儀までしてしまっていた。  僕の性格がそうさせてしまうのか、それとも、北山がそうさせてしまうのか、それは分からないのだが。  しかし、未だに、僕の心臓は高鳴ったままだった。 でも、何でかいつものように踏み切れないのは何故なんだろう。  本当に僕は北山の事は好きだ。  そう思っていると、北山が声を掛けて来た。 「御手洗さんって、カッコいいですよねー」  その北山の言葉に再び動揺してしまう僕。 「へ? え? あ、あー、ま、まぁ……そうなんですかねぇ?」  と面向きにはそう答えておく。 「僕はそんな御手洗さんの事が好きなんですけど」  その言葉に僕の方は目を丸くしてしまう。 まさか自分が想っている人の口から『好き』という言葉が出て来るとは思ってなかったからであろう。  しかし毎回ここで会っていても、いつも通りの自分だったのに、その北山の言葉に再び鼓動が早くなって来る。 いや、半分は完全な動揺でもあるのだが。  って、僕は何をしているのであろう。 そういう告白みたいなのは、普通に考えて僕が先に言った方がいいのでは? そこは男としてというのかなんていうのか……しかしこう今回の恋愛については何でか僕は完全に北山にリードされてしまっているように感じるのは気のせいであろうか。  そう僕はタチだ。  だからこう北山が僕からしてみたらドストライクで、本来だったら、僕の方が色々とリードしていかなきゃならないのに、完全に今回に限っては北山に何もかもリードされてしまっているようにも思える。  もしかして北山はそういう人間でも襲い系とか誘い系なのであろうか。  それもいいとしよう。  だって、今回は僕の方が何でだか北山さんにリードされてしまっているのだから、そういうパターンだってありだっていうことだ。 そう誰も告白を待っているというタイプではないのだから。 そういう人間もいるということだろう。 「でも、いきなり、僕にそんな事を言われても、御手洗さんは困るだけですよね」  と急に俯きながら切なそうに言う北山。  いや寧ろそんなことはない。 寧ろ、僕の方が北山のことを多分先に好きになっているのだから。  だから僕は、 「いや、大丈夫ですから……僕も北山さんの事、最初っから好みでしたからね」  その僕の言葉に北山は顔をあげて、目までもキラキラさせ、こう乙女チックに僕の事を見上げて来る。
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