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第一章 最悪な第一印象
「失礼します」
あやかは村藤コーポレーションに二十年勤めているにも関わらず
社長室にこの日はじめて足を踏み入れた。
ふかふかのジュータン、広い廊下、高そうな植物が置いてあり、
社長室のドアをノックする前に、化粧室に寄った。
大理石で出来た化粧台、鏡はピカピカに掃除が行き届いている。
(凄い、同じビルとは思えないなあ)
社長秘書にならなければ、この空間では働けない。
(私、大丈夫かなぁ)
しかも、まさに本日から社長就任した村藤潤一郎と初対面なのだ。
なぜ、総務部のあやかがここにくることになったのか。
朝一番で、社長から総務部部長に連絡が入り、朝の会議に必要な書類を
自宅マンションに忘れてきたとの事だった。
「悪いが、俺のマンションに行って書類を取ってきてくれないか、
秘書には内緒で頼む」
「かしこまりました」
「マンションのコンシェルジュに連絡しておくから、部屋に入れてもらってくれ」
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