空からマイクが降ってきた

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「あれ……どこだ? ここ? 真っ白い空間? あ、ここは病院か……」  でも、なんか変だぞ。  真っ白なのは真上だけだ。  辺りは赤い色に包まれていて。   「お兄ちゃん……いつまで、そこにいるの?」 「え? 退院するまでだけど……フッ、妹よ。お前は無事だったようだな……良かった」 「じゃあ! 今すぐに! 入院してきなさい!!」  っと、妹とは違う声。  ゴスッ!   「はおっ!!」  今度は腹に強い衝撃を受けて、俺は昏倒しそうになった。 「お兄ちゃん? 良かったね……」 「は?? う……痛い……」 「その人よ」 「え? ひょっとして……声からして……佐・江・島さん??」 「……そう」 「お兄ちゃん! 急にお腹の痛みが治ったぞ! 痛いのどこかへ飛んでったぞ!」  俺は佐江島さんの真下から立ち上がり、その人の顔を見た。  そう。そこにいるのは……他でもない。佐江島 萌理さんだった……。   ーーーー  雲が遥か下の方に見える。  やがて、日が沈み。大きな月がガラステーブルに映える。俺と佐江島さんと妹は囲んでテーブルに座っていた。  窓際に目を移すと、東からの風が強いというのに、グングンと空を前進するその大型船は、超大型飛空船のようだった。窓の外には広大な中庭やベランダガーデンがある。 「でも、助かったわね。地面が顔面で……」 「はあ……」 「普通どっちも助からないよね? あ、でも。その前に普通落ちないよね?」  妹の言う通りだ。  だけど、多分ね。俺の異能力のお蔭さ。  佐江島さんは、大型飛空船から落ちたのだそうだ。  停泊のために、超低空飛行していたとはいえ、そこから落ちてくるというのは、よっぽどの訳があるに違いない。  だが……佐江島さん曰く。 「鳥が空を飛んでいたから」    だ、そうだ……。  可愛い鳥を見つけたので、つかまえようとして、手摺りから手を伸ばした結果。鳥のようには飛べずに落下したのだそうだ。  
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