10人が本棚に入れています
本棚に追加
アーサー
✳︎✳︎✳︎
「アーサー、やっと国に帰れるな。愛しい奥さんが待ってるんだろう?」
「奥さん?」
「ほら、リディアだよ。フレデリックが言っていたぞ。婚姻届がどうのって。卒業してすぐに駆り出されたから、お前結婚式もしてないだろう」
「あぁ、婚姻届ね」
「まぁ、とにかく、元気でがんばれ!」
「ありがと」
アーサーはこの7年間共に過ごした仲間と抱き合い、別れの挨拶を交わす。
一時は捕虜として捕縛され孤島に送られていたが、すぐに解放された。
解放されたものの、その後もトラブルに巻き込まれたり、助けてくれた村の荒れた地を開墾したり、なんやかんやと各地を転々とするはめになった。
そうして、先日やっと自国軍に保護されたのだ。
これでやっと、帰れる。
フレディとリディアはどうしているだろうか?
こんなことになるのなら、あの時すぐに返せば良かった。
アーサーは、服の裏の隠しポケットを手で触れる。
縫い付けてある袋の無事を確認して、安堵のため息をもらす。
これだけは、どんなことがあっても死守してきた。厳重に保護している。
最初のコメントを投稿しよう!