アーサー

1/2
前へ
/11ページ
次へ

アーサー

✳︎✳︎✳︎ 「アーサー、やっと国に帰れるな。愛しい奥さんが待ってるんだろう?」 「奥さん?」 「ほら、リディアだよ。フレデリックが言っていたぞ。婚姻届がどうのって。卒業してすぐに駆り出されたから、お前結婚式もしてないだろう」 「あぁ、婚姻届ね」 「まぁ、とにかく、元気でがんばれ!」 「ありがと」 アーサーはこの7年間共に過ごした仲間と抱き合い、別れの挨拶を交わす。 一時は捕虜として捕縛され孤島に送られていたが、すぐに解放された。 解放されたものの、その後もトラブルに巻き込まれたり、助けてくれた村の荒れた地を開墾したり、なんやかんやと各地を転々とするはめになった。 そうして、先日やっと自国軍に保護されたのだ。 これでやっと、帰れる。 フレディとリディアはどうしているだろうか? こんなことになるのなら、あの時すぐに返せば良かった。 アーサーは、服の裏の隠しポケットを手で触れる。 縫い付けてある袋の無事を確認して、安堵のため息をもらす。 これだけは、どんなことがあっても死守してきた。厳重に保護している。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加