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式を終えて、あちこちで別れの挨拶をしている生徒達の横を通り過ぎて、私は図書室へ向かった。
いつもあなたが座っている場所へ、後ろからゆっくりと近づく。
正面から向き合うのがこわくて。
「好きです!」と、顔中真っ赤にしながら告白をした。
婚姻届を手に持ち、それを突き出すような姿勢で。
当時、学生の間でひそかに流行っていたのだ。
好きな人への告白する時に、自分の名前を記入した婚姻届けを渡すことが。
それだけ真剣な想いが伝わる、ということで。
受け取った側も署名をして、2人のどちらかが保管するのだ。いつかこの婚姻届を提出する日を夢見て。
振り返ると、とても危険な行為だ。
私は、身をもって痛感することになる。
「え、リディア?」
「ア、アーサー? なんでっ、ここに?」
机に突っ伏していたアーサーが、振り向いて私を見る。
その後、入口のドアから足音が聞こえた。
駆け出して行くフレデリックの後ろ姿が見える。
「フレディ、遅かったじゃないか、っておいどこ行く?……あー、リディア?
君の気持ちは、分かったよ」
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