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アーサーは婚姻届を受け取ると、私の頭にぽんと軽く手を乗せてから、立ち去る。
呆然とする私は、脱力して床に崩れ落ちた。
どうして、確認しなかったの
フレデリックが机に突っ伏した姿を見たことないのに。
緊張して、きちんと見ることもできなかった。
まさかアーサーが座っているなんて、そんなこと想像もしなかったから。
あまりにも恥ずかしい。
間違いだとアーサーに伝えなければ
いけないのに、臆病な私はすぐにおいかけることもできなかった。
翌日、婚姻届を返してもらおうとアーサーを訪ねた。けれど、すでに遠征に出立した後だった。
その後、アーサーから手紙を預かっていると、フレデリックから受け取った。
内容は
「あの婚姻届は、提出するから心配しないで」
と、それだけ書かれていた。
いつアーサーが帰ってくるのか、不安な日々が続いた。
きちんと話し合いたいのに、どこにいるのかも分からない。
無事でいてくれたらいいと、友人として待っていた。
書類上は、あなたの妻かもしれないけれど。
帰ってきたら、何から話そうかと毎日毎日ずっと考えてきた。
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