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「ただいま」
どれくらい久し振りだろう。俺はそう言いながらドアを開けた。佳苗が目を丸くしてこちらを見ている。今日は普段している残業を断って早めの帰宅をしてみたのだ。
「どうしたの今日は。早いわね」
「ああ。ちょっとな」
思えばこうした会話も久しくしていなかった気がする。妻もそう思ったのか黙りこくった。俺達二人は夫婦のはずなのに、隣人と会話するより少ない時間しか共に過ごしていなかったのだ。
「これからのこと、少し話したいのだけどいいかな?」
「これからのこと?」
「そう、俺達のこれからさ」
俺はそう言って彼女を抱きしめた。
「ただいま」
完
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