第七章 イケメン完璧社長の奇行

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「なんにせよ、社長をペットだと思って可愛がってあげればいいだろ?」 「できるわけがないじゃないですか!」  なんだかみんなに面白がられている。まあ、これは社長の気まぐれだ。深く考えるだけ損だし、興味がすぐにそれるかもしれない。  ……そう思っていたのに。  仕事を終えて会社を出ると、社長が立っていた。私の姿を見つけると、社長は満面の笑みで駆け寄ってきた。 「奇遇だな、俺も今終わったところだ。一緒に帰ろう」 (奇遇? また?)  さすがに今回も信じることはできなかった。あきらかに不自然すぎる。 (私をずっと待っていたってこと? どうして?) 私の不審な表情とは裏腹に、社長はとても嬉しそうだ。  変に懐かれてしまっている。困るかといえば、そりゃ困る。なんせ社長だ。  でも、一緒にいられて嬉しいという気持ちもある。  ただ、私の好きと、社長が私に対して寄せる好意は決定的に違うと思う。とても複雑な心境だ。  ご機嫌の社長と並んで歩く。いつから待っていたのだろう。もしかしたら朝も私のことを待っていたのかな?  昨日わざわざ買ってきてくれた差し入れを思い出す。  ただの社員にそんなことまでするだろうか。でも、社長から好かれるようなことをした覚えはない。 「そうだ、昨日お渡しした防犯ブザーは持ってきている?」 「あ……家に、ちゃんと置いています」  まずい、あれは持ち歩きしないといけないやつだったのか。家や携帯用で、だから大きさも違うし複数個あったのか。  社長は眉根を寄せて厳しく言った。 「いけないよ、こういう夜道の女性の一人歩きが一番危ない。家もセキュリティが甘いし、田中さんに何かあったら……」  途中からぶつぶつと独り言のように呟いて考え込んでいた。  どうやら社長は私のことをとても心配しているようだ。こうなると、社長は毎朝毎晩、私のことを待っていそうな気がする。  アパートに着いたので、社長に別れの挨拶をして家に入った。  社長は、家のドアが閉まるまでしっかりと見届けていた。 (どうしよう、なんか、変なことになってきた)
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