第七章 イケメン完璧社長の奇行

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 これは好意を寄せられているのだろうか。それにしては行動が極端で行き過ぎている。 (これ、もしかしてずっと続くの?)  素直に嬉しいと思えなくなっている自分がいる。  そっとカーテンの隙間を開けて外を見ると、アパートの前の道路に社長がまだ立っていた。 (どういうこと? ずっと見守っている気?)  ここまでくると、ちょっと寒気がしてくる。意を決し外に出た。 「どうした? 買い物か?」  社長は悪気のない顔で私に話しかけた。私は口を真一文字に結び、早足で社長に詰め寄った。 「こういうのは困ります!」  私の勢いに圧倒された様子で、社長は困惑の表情を浮かべた。 「こういうのとは?」 「待っていられることです。朝も、夜も、ずっと私が出てくるのを待っていましたよね? それに、会社でもずっと私の側にいて。周りの目もありますし、そういうのは本当に困ります!」  少し怒った口調ではっきり物申すと、社長は驚いた顔をしたあと、気落ちして項垂れた。 「悪かった」  社長は小さく謝罪を述べると、そのまま踵を返して会社の方向へと歩いていった。  背中からは哀愁が漂い、『トボトボ』という言葉を具現化しているような歩き方だった。 (あれ、私、言い過ぎちゃったかな?)  あまりにも社長があっさり引き下がり、とても反省した様子で帰っていったので不安になる。  社長はそんなに悪いことをしたのだろうか。私が過剰反応しすぎだったのだろうか。いてもたってもいられなくて、社長の後ろ姿を追った。 「社長!」  走りながら社長の腕を掴むと、社長は驚いて止まった。 「あの、すみません、私、言い過ぎました」  息を荒げて申し訳なさそうな目で社長を見上げる私に、社長は優しく微笑んだ。 「謝ることはないよ。俺は大丈夫だから」  儚げに微笑む社長の顔は慈愛に満ちていた。大丈夫なんかじゃない、絶対傷つけた。 「でも……」 「夜も遅いし、早く帰った方がいい。本当はまた家まで送りたいが……気をつけて帰れよ」  社長は私の頭を優しく撫でた。
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