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第八章 君の恋人になりたい
「お前、それストーカー行為だぞ?」
医務の相談室に来ていた俺は、祐樹からの一言に絶句した。
祐樹には、彼女を見つけたこと、社員だったこと、彼女が心配で家の前や会社で待っていたら、そういうことはやめてほしいとはっきり言われたことなど、全て話した。
話した上での祐樹の感想が、先ほどの強烈な一言である。
「え、俺がストーカー?」
にわかには信じがたく、思わず聞き返す。
「本気でもうやめろよ。犯罪になるからな」
(犯罪!)
強烈すぎるパワーワードだ。ただ俺は彼女のことが心配で、彼女のことが好きすぎて少しでも一緒にいたかっただけだった。
でも、彼女の気持ちはどうなのだろう。俺のことが好きならいいだろうが、好きでもない奴からそんなことされたら、たしかに恐怖かもしれない。
「出勤前に家の前で待っていたとか怪しい人物認定されるだろ。どのくらい待っていた?」
「まあでも、一時間半くらいかな。彼女に会えると思うと、待つことも楽しい」
俺は待っていた時の高揚感を思い出し薄っすら微笑んだ。一方で、俺の言葉に祐樹は冷ややかな目をして口の端を歪めていた。
普通はそんなことしないのだろうか。そういえば、付き合っていた歴代の彼女にはそんなこと一度もしたことがない。
「お前さあ、今までどうやって付き合っていたの?」
「曖昧で漠然としたものだよ。付き合ってと言われたから、綺麗だし性格も悪くないから、まあ不都合はないか、という流れかな」
「なにもしなくても寄ってくるからな、お前の場合は」
そういう祐樹こそ、引く手あまたのモテ男だ。だが俺と違って、女性に興味津々で陽気なので、恋愛の仕方も抜群に上手い。しかしながら、いささか調子が良く言葉が軽薄だとは思う。
「付き合うってどうすればいいんだ?」
「そりゃ告白して、付き合いましょうって言って……ってまてよ。お前の場合、いきなりわけわからんタイミングで告白してしまいそうだ」
祐樹は慌てて発言を打ち消した。
「え、告白にも手順が必要なのか?」
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