4人が本棚に入れています
本棚に追加
「わたしがお姫様になったら、みんなが救われる?」
「そう。アルタンティスの姫に」
バビロンが指差したのは、街の外にある広大な樹林の方角だった。
「アルタンティス?」
「そう。アルタンティスは人間が言う異形のものたちが静かに住まうところだ。しかし土地を欲している人間は無闇に攻め入り、日々互いの命を削っている。そしてとうとう明朝には火を放ち大戦を起こす」
「兵隊は街を守るために戦っていたんじゃ……」
「一方的に攻め入っていたんだ。命がけとなれば異形のものも手は抜けない」
「そんな……」
スピカは話を聞きながら、昼間見た小さな異形のものを思い出していた。
「アルタンティスは自由な大地だ。しかし、このままでは人間が全てを壊してしまう。そなたが姫となるなら、城ができ国境ができる」
「どうして私が?」
「資格を持っているとでも言うべきかな。さあ。ここで人のまま人として扱われずに生きるか。アルタンティスで異形のものの姫として生きるか」
「わたしがお姫様になれば争いはなくなるの?」
「正直、人間しだいだ。だが境界の存在は大きいだろう」
アルタンティスで姫になるということは、人間と決別し異形のものの盾となるのと同義だった。争いが減れば人も死なずにすむ。
バビロンの言葉が真実かはわからない。怪物の罠かもしれない。それでも、このままでは何も変わらない。スピカはバビロンに答えを告げた。
最初のコメントを投稿しよう!