囚われの花嫁『地獄の結婚生活体験レポート』【竹書房Web小説コンテスト応募作品】

「方向音痴は黙ってろ！」（特徴９、２）

　翌日の美味しいはずの朝食もまったく記憶にない。観光もせず帰途に。

「私の指示どおりに走ってね？　曲がるべきところを曲がらなかったらすぐにＵターンするのよ？」
「……」

「返事は？」
「わかってる」

　いや、全然わかってないのだ。彼は腹の中ではノーと思いながら口先だけでイエスと言う大嘘つきなのだ。

　♢

　そして車で遠出するたびに同じようなことが何(・)度(・)も(・)あった。
　それでも彼は自分が方向音痴であるという事実を決(・)し(・)て(・)学習せず、自分が道を間違えているという事実を私に指摘されるたびにブチ切れた。

「方向音痴は黙ってろ！」

　そして明後日な方向に走り続け、時間と労力とガソリンを延々と無駄にし続けたのである。

「方向音痴は黙ってろ！」

　どうして私のセリフを奪ってしまうのか？　これがＮＰＤの特徴なのだ。

【「お前が言うな」と言いたくなるセリフを言う】人がいたら、その人物はＮＰＤである可能性が高い。