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しばらくすると更衣室のドアをノックする音が。
「はーい!」
「集合写真、どうするんですか !?」
問い詰めるカメラマンの声。
「いらない! いらない!」
姑がわめく声もする。なぜか夫は、カメラマンにも姑にも何も言ってないらしい。
困った私は更衣室を出て夫を探しに。やっとみつけた夫は、礼拝室の中に入ってしまっていた。
花嫁入場の前に花嫁が礼拝室の中に入るわけにはいかない。神聖な礼拝室の中にいる夫を大声で呼ぶわけにもいかず、手を振って合図しようにも夫は背中を向けている。
私を追ってきたカメラマンが後ろから、「どうするんですか! どうするんですか!」と責め立てる。
カメラマンを追ってきた姑は、これまで見た事もないおかしな顔つきで、「いらない! いらない!」とわめき立てる。すっかり人相が変わっていて別人のようだった。昔の人は、これを狐憑きと呼んだのだろう。
私は『早くこっちに気づけ!』と夫にいら立つ。だが夫はまったく気づかず、礼拝室の中をフラフラしている。
「『集合写真は打ち合わせどおり撮影してもらう』と姑とカメラマンに言っておく」と約束したのに、何をしてるのだろう? 約束を果たさない無責任な夫に腹が立つ。夫のせいで、私が姑とカメラマンから責め立てられ苦境に立たされているのだから。
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