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「そりゃ山越えはするわよ、海辺町は山の向こうなんだから。だけどこの山じゃないのよ。
この山越えたら全然違う内陸県の山辺町に行っちゃうの。目的地の海辺県の海辺町には行けないのよ。この地図を見て」
「うるさいな、方向音痴は黙ってろ!」
とブチ切れ。自分にとって都合の悪い言葉は聞き入れず、侮辱・罵倒・恫喝して黙らせようとする。
私が何を言おうとも、夫は無視して聞こえないふりをするばかり。卑怯の極みである。
こうなるともう梃子でも動かない。頑固で意固地で強情で打つ手なし。
山越えして内陸県山辺町へ下山したら、下の道を延々と何時間もかけて隣県の海辺町に向かって走るしかない。あきらめた私は黙り込む。
当然、いつまでたっても目的地に辿り着けない。
「あれ~、おかしいなぁ」
彼は一人で不思議がっている。
『俺は正しい道を走っているのである。なのにどうして、いつまでたっても目的地の海辺町に辿り着けないのだろう?』
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