「方向音痴は黙ってろ!」(特徴9、2)

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 道は()いていた。ガラガラだった。彼が道を間違えて、全然違う山を越えたのだ。  自分の非を認めず、大嘘をついてごまかそうとする。夫の悪癖だ。幼少期から嘘を習わしにしていたのだろう。  大人になってから突然、大嘘つきになってしまったとは到底考えられない。  低知能ほど嘘をつく。高知能は成長する過程で嘘をつくリスクを学習できるから、あまり嘘をつかなくなる。  だが低知能は学習能力が低いために嘘をつくリスクを学習できず、大人になっても嘘をつき続けるのだ。 「今? 今は山辺町です。山辺町からだったらどれくらいかかりますか? ……え、三時間? すいません! 急いで行きます」  私は穏やかに質問してみた。 「『海辺町は山越えしたらすぐだ』って言ってたわよね? なんであと三時間もかかるの?」 「あれ~? おかしいなぁ」    卑怯にも彼は都合の悪い質問には答えず不思議がるばかり。 「ここを見て」  私は地図を見せて指を指す。
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