「方向音痴は黙ってろ!」(特徴9、2)

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「目的地の海辺町はここでしょ? だけど現在地はここ、内陸県山辺町。全然違うでしょ? ずいぶん離れてるわね?  全然違う山を越えたからよ。だから内陸県の山辺町に来てしまったの。今まで全然違う方向へ走って来たわけよ。時間と労力とガソリンを無駄にして」 「今そんなこと言っても無意味だろ! そんなこと言ったって時間が無駄になるだけで、海辺町には着けないんだぞ!」  お得意の自己愛憤怒だ。 「全然違う山を越えても海辺町には着けないのと同じね。全然違う山を越えるという無意味な事をしても、時間が無駄になるだけで、海辺町には辿り着けないのよ」 「……」  都合の悪い事実を指摘されると、卑怯な夫は黙り込んで返事をしない。謝罪も反省の弁もない。礼儀知らずにも程がある。  もう一刻の猶予もならない。二度と道を間違えるわけには行かない。 「私がナビするから、ちゃんと聞いてよ?」 「……」
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