囚われの花嫁『地獄の結婚生活体験レポート』【竹書房Web小説コンテスト応募作品】

妄想

　夫はパソコンに関するなんの知識も技術も実績もない。
　なのに、でたらめにガチャガチャするだけでパソコンが起動すると本気で確信している。
　すなわち妄想に取り憑かれているのだ。

　そして今度は互換性のないソフトをワープロ専用機に入れても使えると根拠なく確信。
　自信満々ででたらめにガチャガチャするが画面はびくとも動かない。

「互換性のないソフトを入れたって読み込めないのよ」

　とどんなに道理を説いても鼻で笑って信じない。

『ガチャガチャすればどんなメカでも自由自在！』

　と確信しているから自信満々にでたらめにガチャガチャするが、画面はびくとも動かない。

　すると腕を組んで首をひねり、

「あれー？　おかしいなあ」

　と本気で不思議がる。

　これまでそんな事ができたという成功体験など一度もないのにもかかわらず。これを「幼児的万能感」と言う。

　夫は成人しても尚、幼児的万能感から卒業できてなかった。
　この幼児的万能感は「スーパーマン妄想」と言い換えるとわかりやすいかもしれない。
「スーパーマン願(・)望(・)」ではなく「スーパーマン妄(・)想(・)」である。