結婚式

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結婚式

 私たちの結婚式は四月。夫の定休日の水曜日ではなく日曜日を選んだのは、夫の勤務先の社員たちの乱入を防ぐためだ。もうこれ以上、誰からも私たちの結婚をひっかき回されたくなかった。とは言え主犯はほとんど夫なのだが。  夫の運転で礼拝堂(チャペル)へ行き、カメラマンと最終確認。するとなぜかその場に姑がしゃしゃり出てきた。 「撮影は挙式後、新郎新婦のツーショット一枚、新婦のみ一枚、列席者全員との集合写真一枚、計三枚……」  カメラマンの言葉に頷く私と夫。ところが姑が横槍を入れてきた。 「列席者全員の集合写真なんかいらない!」  もうとうに決まっている事なのに。写真を何枚撮るかを相談しているのではなく、最終確認しているのだ。なのに夫は姑をたしなめようともせず、なぜか無言で新郎新婦の衣装ケースを持って更衣室へ行ってしまったのである。 「集合写真、どうするんですか !?」  カメラマンが私に詰め寄る。答えに窮する私。「いらない! いらない!」とわめく姑。 「(まなぶ)さんを呼んできます」  私は更衣室へと夫を追った。これからの長い人生をお世話になる姑に対し、真っ向から反対意見を言うことは(はばか)られたからだ。  更衣室では()()()夫が衣装に着替え始めていた。最終確認も済んでないのに。 「『集合写真は打ち合わせどおり撮影してもらう』ってお母さんとカメラマンさんに伝えて」 「うん、わかった」  夫が了承したので、私も着替え始めた。  ウェディングドレスは一番シンプルなものを選んでレンタルしておいた。サイズは十一号。ウエストはブカブカ、和装ブラで胸を圧し潰さなければファスナーが上がらない。マリリン・モンローとほとんど変わらないメリハリボディだから、既製品ではサイズが合わないのだ。  夫はシルバーグレーのタキシード。短足の彼にはズボンの裾が長過ぎるので、十二センチもある男物のハイヒールを履いてごまかしていた。夫は自分の姿を鏡に写して、あれこれポーズをキメてみたりキメ顔を作ったり自分に夢中だった。もちろんこれらのレンタル衣装代もブーケ・ブートニア代も私が全額負担させられた。浪費家の夫に預貯金などないからだ。  自分の姿に満足した夫は、更衣室を出て行った。姑とカメラマンに「写真は打ち合わせどおり撮影する」と言いに行ったのだろう。
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