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だけどこのチャンスを無駄にするなんて男じゃない。
せめて俺を意識してもらえるように、とちょっと大胆なことをした。
先生に黙っていると結んだ約束。
絡めた小指をわざと離さないままでいた。
彼女は驚いたそぶりを見せたものの、嫌がったりはしなかった。
俺のこと、少しでも見て欲しい。
意識してほしい。
テラスに来るのが先生だったら終わっていた。
だけどその賭けに勝ったのだから、この流れに乗りたいと思った。
好きの2文字は飲み込んで、ただきっかけ作りに留めた。
だけどたぶん、この賭けにも勝ったんじゃないかと思う。
だって、翌朝から雨宮の視線をよく感じるようになったから。
「雨宮、おはよ」
「あ、佐草くん。おはよ」
林間学校が終わって次の登校日に挨拶をすれば、彼女は少しだけ頬を赤らめながら挨拶を返してくれた。
きっとあの夜を皮切りに彼女は俺を意識してくれたはず。そうでなきゃ困る。そうであって欲しい。
2人だけの秘密からでいい。この恋を実らせたい。
あの夜、星がくれたチャンスを逃してなるものか。
俺は高鳴る鼓動を隠し、彼女に笑みを返して自分の席に向かった。
了
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