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旅館の外に出たいけれど、どうせ出入口は開いていないだろうなと思いながら、入り口を目指す。
その途中の廊下で、隙間があるドアを見つけた。
昼に通ったときは透明なガラス戸だったと思うのだけど、外が暗闇すぎて黒いドアにしか見えない。
こちら側の様子がガラスに映っているばかりで、外の様子は見えなかった。
もう少し近づけば外が見えるだろうかとドアに近づく。
押せば簡単に開いたドアの向こうはやはり外だった。
「うわ……」
真っ先に視界に映った空には幾つもの星々が輝いていた。
天の川が見えるほどの暗闇はさすが山の中。
その星空に招かれるように外に出る。随分と広いテラスを歩いていると、人影が見えた。
先生だったら……と背の高い人影を窺う。
わたしの気配に気づいたのか、相手はこちらを振り返った。
「……雨宮?」
わたしの名前を呼んだ相手の声には聞き覚えがあった。
「佐草くん?」
「おー」
クラスメイトの佐草くんだ。
クラス一の長身で、モデルのようなスタイルの良さ。本人はあまり目立つのが得意じゃなくて、いつも教室の隅で息をひそめているような人。
一度彼と隣の席になったときに何度か話したことがあるけれど、案外話しやすい人柄をしている。
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