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「嘘ついたら……針5千本飲ます」
「こっわ。大丈夫だって、約束は守る」
わたしの冗談に、佐草くんはまたクスクスと笑った。
そのまま離れていくと思った小指は、佐草くんに捕まれたまま。
彼は空を見上げて、「山ってすごい星が見えるんだな」と言った。
「そ、そうだね」
わたしは繋がったままの小指にばかり集中してしまって、適当な返事をしてしまった。
「放してほしい?」
「え?」
「小指」
「……えっと……。佐草くんって、そういう人だっけ?」
「さぁ」
彼が何を言いたいのかよく分からない。
暗闇の中で彼が意味深に笑ったのは分かった。
「見て。あんだけ星があったらどれがどれなんだかさっぱりだ」
佐草くんが反対の手の人差し指を空に向ける。釣られて空を見上げると、視界いっぱいに星空が映った。
「本当だよね。この中からどうやって星座を作ったんだろうね」
わたしは小指に意識を向けないようにしながら言う。
「……このまま朝まで天体観測してようか」
「明日、寝不足になるよ」
「帰るだけだしいいよ」
「寝れるんだったら寝た方がいいんじゃない?」
「じゃあ雨宮も部屋に戻る?」
「わたしは……まだここにいる、かな」
「じゃあ俺も」
楽しそうに笑った佐草くんは、少しだけわたしの小指に絡んでいる小指に力を入れた気がした。
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