星空の下のテラス

8/8
前へ
/10ページ
次へ
ーー 翌朝見た佐草くんは少し眠たそうだった。 それもそうだろう。 東の空が明るくなるまでテラスにいたのだから。 『少しくらい寝たら? 膝でも貸してあげようか』なんて冗談めかして言ったら、彼は『本気にするよ?』なんて真剣な目で返された。 返り討ちにあったわたしはどうぞ、とは言えなかった。 おかげでお互い寝不足だった。 こらえきれずにあくびをすれば、目が合った彼も口を隠していた。どうも佐草くんもあくびをしたところだったらしい。 わたしたちはクスクスと笑い合った。 「なになに、あんず、林間学校の間に佐草となんかあった?」 「べつに、何も?」 ニヤニヤした顔をわたしの肩に乗せてきた柚葉にすっとぼける。 彼女の額を軽く叩いて頭をどけさせる。 「3組ー! バスが来たから乗りなさい。押したりせず順番にな」 担任の声が聞こえ、わたしたちはバスに乗るために列を作った。 前の方に並んでいた佐草くんを見つけたわたしは、彼のことばかり目で追ってしまった。 まさか、まさかね。 彼がわたしに気があるなんて、さすがに自意識過剰か。 それでも、わたしから彼を意識するには十分な夜だった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加