2人が本棚に入れています
本棚に追加
ーー
翌朝見た佐草くんは少し眠たそうだった。
それもそうだろう。
東の空が明るくなるまでテラスにいたのだから。
『少しくらい寝たら? 膝でも貸してあげようか』なんて冗談めかして言ったら、彼は『本気にするよ?』なんて真剣な目で返された。
返り討ちにあったわたしはどうぞ、とは言えなかった。
おかげでお互い寝不足だった。
こらえきれずにあくびをすれば、目が合った彼も口を隠していた。どうも佐草くんもあくびをしたところだったらしい。
わたしたちはクスクスと笑い合った。
「なになに、あんず、林間学校の間に佐草となんかあった?」
「べつに、何も?」
ニヤニヤした顔をわたしの肩に乗せてきた柚葉にすっとぼける。
彼女の額を軽く叩いて頭をどけさせる。
「3組ー! バスが来たから乗りなさい。押したりせず順番にな」
担任の声が聞こえ、わたしたちはバスに乗るために列を作った。
前の方に並んでいた佐草くんを見つけたわたしは、彼のことばかり目で追ってしまった。
まさか、まさかね。
彼がわたしに気があるなんて、さすがに自意識過剰か。
それでも、わたしから彼を意識するには十分な夜だった。
最初のコメントを投稿しよう!