佐草side

1/2
前へ
/10ページ
次へ

佐草side

林間学校の話が出た日の休み時間、俺は雨宮の声を聞いた。 どうやら、彼女は自分の家以外で寝ることができないらしい。 それを聞いた時から、俺はどうやって彼女に近づこうかと考えていた。 自分から声をかけられればいいけれど、そうするとクラスの誰かに見つかるかもしれない。 変に噂になるのも嫌だったし、雨宮への迷惑も考えたら、もっと誰もいない時に話せた方がいいなと思った。 考えて考えて、何も浮かばないまま林間学校の当日になってしまった。 夜になり、同じ部屋になった3人の男子たちは電気が消えるなり寝息を立て始めた。全員寝相が悪くて、足や腕に引っかからないように抜け出すのは大変だった。 もし雨宮が本当に寝られなかったとしても、部屋を抜け出すかどうかは分からない。夜に会おうと約束したわけでもないのだから。 昼間に見つけたテラスへの出口まで行き、わざと少しだけドアを開けたままにして外に出た。 広がる暗闇に足がすくみそうになったけれど、空を見上げた瞬間目に映った光景に恐怖心なんて一瞬で消えた。 星を追いかけるようにテラスに出た俺は、ひとつだけ流れた流れ星に遅ればせながら慌ててお願いをした。 「雨宮に会いたい」 その願いが届いたのかただの偶然なのか、雨宮はテラスに現れた。 正直、夢かと思った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加