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佐草side
林間学校の話が出た日の休み時間、俺は雨宮の声を聞いた。
どうやら、彼女は自分の家以外で寝ることができないらしい。
それを聞いた時から、俺はどうやって彼女に近づこうかと考えていた。
自分から声をかけられればいいけれど、そうするとクラスの誰かに見つかるかもしれない。
変に噂になるのも嫌だったし、雨宮への迷惑も考えたら、もっと誰もいない時に話せた方がいいなと思った。
考えて考えて、何も浮かばないまま林間学校の当日になってしまった。
夜になり、同じ部屋になった3人の男子たちは電気が消えるなり寝息を立て始めた。全員寝相が悪くて、足や腕に引っかからないように抜け出すのは大変だった。
もし雨宮が本当に寝られなかったとしても、部屋を抜け出すかどうかは分からない。夜に会おうと約束したわけでもないのだから。
昼間に見つけたテラスへの出口まで行き、わざと少しだけドアを開けたままにして外に出た。
広がる暗闇に足がすくみそうになったけれど、空を見上げた瞬間目に映った光景に恐怖心なんて一瞬で消えた。
星を追いかけるようにテラスに出た俺は、ひとつだけ流れた流れ星に遅ればせながら慌ててお願いをした。
「雨宮に会いたい」
その願いが届いたのかただの偶然なのか、雨宮はテラスに現れた。
正直、夢かと思った。
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