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その明るい笑顔と自信に満ちた態度は、綾にとってまぶしすぎる存在だった。
職場で読書好きの文学女性として通っていた綾は、同僚たちに紹介されて弘明と話す機会が生まれた。
「高橋さんは、本を読むのも好きなんですか?」
その問いに、弘明は驚きの表情を浮かべた後、優しい笑顔で「読んでますよ」と答えた。彼の声は、心地よい音楽のように響き、綾の心を掴む。
「岩永さんは、どんなジャンルの小説が好きなんですか?」
と尋ねる弘明に、綾は少し照れながら「私は恋愛小説とか、ヒューマンドラマ系が好き」と返す。「俺は、読むのも書くのもミステリー系ですね」と弘明が言うと、綾は「私、頭が良くないからミステリーは小説よりもドラマや映画になっちゃう」と笑った。
軽い気持ちで二人を近づけた同僚たちは、驚きの表情を浮かべる。
いつも愛想笑いと相槌のイメージが強い綾が、心の底から楽しそうに話している姿を見たことがなかったのである。彼女の表情は、周囲の空気を和ませていた。
それからも、特別親しくはしないものの、タイミングが合えば本の話をした。
弘明との会話は、まるで久しぶりに会った友人のように自然だった。
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