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所かわって。
魔界第二の大国、アッロマーヌ国の首都、ユレブランス。
どこか優雅な雰囲気の、洗練された大都市だ。
――さて。
いきなりの登場だが、俺の名は度合煎路。
人間と魔族の間に生まれた“ブレンド”だ。
ここからは、俺が経験した事を俺目線で伝えていくんでヨロシクな!
言葉づかいは普段の俺より丁寧にしていくつもりなんで、そこらへんは安心して読んでくれっ。
ではでは、さっそく。
俺がアッロマーヌへ来て、まる六年が経った時から始めよう――
【 語り手/度合 煎路 】
アッロマーヌの戦闘士、アルヴェンソのあんちゃんに弟子入り志願してからちょうど六年。
最初の三年は会ってすらもらえず、毎日毎日あんちゃんが隊長をつとめる戦闘部隊ミドル階級の門をひたすら叩き続けた。
あまりに俺がしつこいものでそのうち門は開けてくれるようになったはいいが、このミドル部隊、聞いていた以上にとんでもなくふざけた暴れ好きの集まりで、
挨拶がわりと称しては俺をさまざまな球技のボールにしやがり、その他もろもろ暴力も魔力も交えてやりたい放題だった。
ゴルフボールにされた時や野球の球にされホームランを打たれた時には、見知らぬ町まで飛ばされたりもした。
まあ、遠くへ飛ばされるのはけっこう慣れてはいるんだが。
そんなこんなで俺は毎回ボコられ身体はズタズタボロボロの傷だらけを繰り返し、再起不能寸前の大怪我を何度も負った。
我ながら、よくこらえたものだ。
「ウィード」と呼ばれる荒くれ戦闘士ども。
おそらく奴らは、半分は鬱憤晴らし、もう半分は俺をあきらめさせるため、もしくは試すためにボコっていたんだろう。
ところがどっこい。身体はズタボロでたとえ骨が折れようと心が折れないのが俺の最大の強みだ。
さすがのウィードも、一部の連中は俺のすさまじい執念を徐々に恐れ始めた。
一方で、時には足を引きずり血を垂らしながらやって来る俺を
「死霊魔族」だと揶揄する者も居た。
死霊魔族とは、いわゆる「ゾンビ」の事だ。
そうして、俺が弟子入り志願して三年が過ぎた頃、ようやくあんちゃんが俺に会ってくれた。
「おお……!!」
その時の俺はあんちゃんが現れた瞬間、まるで降臨した神を崇めるように跪き、振り仰いだ。
俺のまぶたは腫れ上がり、視界は狭まっていたからあんちゃんの顔はハッキリ確認できなかったのだが……
「付いて来い。ブレンド」
あんちゃんの声付きから、俺を疎んじている事は十二分に分かった。
むろん、そんな事を気にする俺ではない。
あんちゃんに言われるがまま付いて行くと、ユレブランスの外れにある自然豊かな町に行き着いた。
――ミッツローグ。
そこにはあんちゃんの家があり、草原さながらの広大な敷地にたくさんの魔犬が暮らしていた。
あんちゃんは大の魔犬好きで、ただ単に好きなのではなく、恵まれない魔犬たちを救うべく保護活動などに尽力しているのだと、俺はその時初めて知った。
ようやく戦い方を教えてもらえるのかと思いきや、俺には魔犬たちの面倒をみる役目が与えられた。
それが四年目の試練だった。
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