第一章 舞翼の奏主の月二十七日 午後四時 1

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「ね、その髪と目の色は精霊族(シャーマン)よね!?」 「そうだけど……、やっぱり、他の国の人から見たら変な感じかな……?」  イグは自分の髪に触れた。藍色の髪がサラサラと指の間を流れた。 「ううん、とっても綺麗! もっと黒髪に近い青だと思ってたんだけど……、本当に蒼い髪なのね……」 「少数派だけどね。どちらかっていうと、金髪のほうが多いみたいだよ」  精霊族は十二の精霊王の加護を強く受けた者の末裔達だ。その証は髪や瞳の色を始めとして、身体能力や強い魔力となって表れる。  世界は精霊王の魔力を受けた土地ごとに十二に分けられるが、精霊族の容姿も地域ごとに特徴がある。  例えば、イグの蒼い髪と瞳は守護神・蒼月王の魔力を受けた蒼月王領の精霊族そのものだ。 「君も精霊族でしょ? 紅龍皇帝領の」 「あら、わかる? 一発で当てられる人はあんまりいないんだけど……」  自分の長いストレートの白金髪(プラチナブロンド)を思わず撫でた。  ここ紅龍皇帝領の精霊族は、金髪か赤髪に茶系の瞳だ。  紫がかった赤髪は紅龍皇帝領の精霊族特有の色だが、リィルの白金髪にセピアの瞳のように金髪と茶系の瞳を持つ精霊族は他の精霊王領にも沢山いるし、人間にも同じ色の髪や瞳は珍しくない。  それだけに、魔法を使ったり戦っている姿を見せない限り、一目でリィルが精霊族だと見抜く人は少ない。 「それだけ魔力が強ければね。それに、『ワイトフォール』は紅龍皇帝領の聖殿関係者に多いファミリーネームだもの。さすがにわかるよ」 「『研究者は賢者の卵』って聞いたことあるけど……、そういうことまで知ってるんだ……」 「まあね……、研究者を名乗るなら、これくらいは知ってなくちゃ」  謙遜しているわりには、イグは照れ笑いを浮かべて視線を彷徨わせた。 (あ、けっこう可愛いかも……)  童顔なせいもあるだろう。小さな子供のような無邪気な笑顔で、見ているこちらまで和んでくる。神学校にはいないタイプだ。  ふと、彼は机に広げたままになっていた本に視線を落とした。
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