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010:一日の始まり
翌早朝。まだまだ真っ暗な中で目を覚ました。隣でミアも置き出した気配がある。小さな声でおはようを言う。レダがまだ寝てるからね。
「さっぶぅ」
私たちは布団から這い出る。う~ん。春とは言えまだ朝は冷えるな。私が体を擦っているとミアが朝の決まり事を教えてくれた。
「朝の早い時間の厠と井戸は女性が優先的に使える時間だから。さっそく行こ?」
というわけで近場の公共の厠まで移動して用を足す。その後は井戸に行って顔を洗う。歯ブラシは、まだ買っていないので今回は口を濯ぐだけだ。早く歯を磨きたいな。
「冷たぁ」
うひぃ。水が冷たいよぉ。そこで固く絞ったタオルを使って服の裾や袖の隙間から体も拭いていく。それだけでだいぶスッキリさっぱりした。
そうやって朝の準備を終えた頃には空が白み始めてきた。ミアが「そろそろ男の人達が起き出してくるから」と教えてくれる。
帰ろうとのことだ。異論はないので素直に帰宅。自宅に戻ったら朝食の準備だ。かまどに火を入れ、水を沸かし始めると部屋の気温が上がり始めた。その頃にはレダも目を覚ましてくる。
「おはよぉ」
「おはよぉ」
レダが外へと出ていった。その間に私とミアは朝食の準備を進めていく。とは言っても、具材をまた少し切り分けて、昨日の残りに放り込み、温めるだけの簡単料理だけどね。しばらくするとレダが戻ってきた。
「ふぅ。寒かったぁ」
男の子の準備は早いね。三人でテーブルを囲み朝食だ。オートミールと豆のスープ。昨日と同じメニューだ。これから、しばらくお世話になりそう。早く美味しいご飯が食べられるようになりたいね。
朝食を済ませたら仕事の時間。ミアは私の日用雑貨を買いに行ってくれるらしい。他には井戸で洗濯をしたり、家で使う水瓶に水汲みをしたりするそうだ。重労働だな。
私とレダは冒険者ギルドへ向かう。そこで掲示板に張り出された依頼の中から良さ気な物を探す。冒険者で溢れかえり押し合い圧し合いしながら依頼票を眺めていく。
ちなみにレダは午前中はトイレの汲み取り作業を。午後は、どぶさらいをするらしい。どちらも大変な仕事だ。それでいて給料は安い。
私は何をしようかと依頼を探していると、技能系で一つ良いのがあった。私はその依頼票を人の波をかき分けて取る。するとレダが興味を示した。
「おっ。技能系か。どんな依頼?」
私は紙を見せながら、読んで聞かせる。
「ん。工房で写本作業だね。羊皮紙に書かれた内容を植物紙に書き写す作業の手伝いだって」
「文字の読み書きかぁ。俺も早く出来るようになりてぇなぁ」
「仕事終わりに時間を作ろうね」
「うん」
文字の読み書き、計算も立派な技能。やはり出来るのと出来ないのとでは全然違う。というわけで私はさっそく依頼票を持って町外れの職人街に移動するのだった。
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