わたしがわたしに還るまで

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 仕事場では、むしろ我ながら組織に溶け込んで、よくやっていると思う。  若いころは破天荒だと友人たちに笑われもしたが、それを自分の個性として受け止めるには苦しくなってきて、普通で良いと思うようになり、35を過ぎたあたりには、さらに進んで普通「が」良いなんて考えるようになった。  でも、その普通って何なんだろう。  世の中でいう平均なんて、結局高望みを誘引するだけで、まるであてにならないことが分かってきたのもあって、自分の位置を見失いそうになる。  それでわたしは「針路を見失った難破船みたい」と自らを嘲り、揶揄したことがある。  歳よりも若く見られることを誇り、平均よりも上であると自負する人がこのごろ多くなったが、今ではそれが平均、普通、年相応なのかもしれない。  そう思うと、そのよくわからない平均と自分をしきりに比べ合って消耗するのは野暮なことだと、内心思っている。  それで”わたしだけが感じうる幸せ”を追い求めていた二十代が、実は一番爽快で楽しかった気がする。 「変わってるね」と自分を評する友人たちが、次々と結婚を決めていっても「あんたたち、早まったね」と笑い飛ばしていたあの頃が、一番幸せを感じていたかもしれない。  それはもちろん、当時の自分がその気になれば恋人の一人二人ぐらいなら比較的容易に作れそうだった、というからでもない。
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