わたしがわたしに還るまで

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 自分の歳を倍にしてみて、人生ってそれほど長くないなと感じ始めて、ちょっと心の風向きが変わったのだろう。  このまま孤独を極めていったら、どうなるだろうか、とこの先に控える闇に見入るような圧倒的な不安が押し寄せていたのである。  誰かと一緒になれないかと周りを見回すと、歳の近い独身である異性を見つけるのに苦労するのが現実だ。  街を歩けば、腹が出るか髪が薄くてパサパサで異性として見るには厳しい男性なら時々出会うが、彼らも二十代のころならそれなりに見栄えして、こちらも心が動いたのかな、と見返すことならある。  分別のない若いうちに結婚してしまえ、とかつて誰かに言われたことがあるが、それはこの歳になると、実によくわかる。    結局、友人たちを見ていると結婚しても、してなくても、それぞれに後悔はついて回るもののようだ。  中には、満面の笑みで幸せだといっている既婚の友人のいるが、話を聞いていると、どうもわたしの欲しい類の幸せではないのだ。  それでも引っかかっているのが、やらない後悔は、やった後悔よりも後をひくということである。  自分は、どうやら結婚ではなく、恋愛をしていたいだけなのかもしれない。  ただ、そうだとしても、やはり同年代の異性にはオトコを感じにくくなっているのが障害となっているかもしれない。  かといって、今さら若い男にぞっこんになるなんて我ながら気色悪い。  それに、仮に最初がうまくいっても、何もかもが先に衰えていく自分を見た相手が、さらに若い女性にシフトしていく、そういう恐れを日々抱きながらパートナーでいることには、想像するだけで不安が無限に膨れ上がっていく。
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