【第9話】待望と絶望のセット

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【第9話】待望と絶望のセット

リズムの乱れた荒い呼吸が廊下を木霊し続ける。 脱力しきった人間を背負っての移動は、身体の成熟しきっていない女子高生にはさすがに厳しかった。 追い打ちをかけるように、前の部屋を出てからの道なりはずっと緩やかな登り傾斜を描いている。 何度も転んで身体の至る所に打ち傷、切り傷、擦り傷の三冠王がすっかり出来上がっていた。 次の広間に辿り着いたとき、アカリを地面に横たえて自分も倒れこんだ。 荒い呼吸で節操なく酸素を取り込みながらふと考える。 この場所に迷い込んでどれくらいの時間がたったのだろう? 酸素不足は顕著だが、腹の虫が不平を言ってくる様子はない。 数時間のような気もするし、数日経っていると言われても納得できそうな気もする。 その時、自分が来た入口と反対の通路から何かの気配を感じた。 「人!?人がいるわよ!!」 驚いた声を皮切りに幾人もの男女が雪崩れ込んできて、返事を返そうとした身体が凍り付く。 「あなた、影山?」 「高菱(たかびし)……さん?」 他の男女にも当然見覚えがあった。 絶望の最中で待望した自分たち以外との出会いは、よりにもよって自分をイジメているグループそのものだった。
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