【第12話】あかりの先へと

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【第12話】あかりの先へと

「えっ……?」 告げられた言葉が、理解できない。 「覚えてる?ウチは陸部の合同練習でヨルちゃんの高校に行ったって」 たしかに、初めて出会ったときにそんなことを聞いた気がする。 「その帰りにね、バスが事故を起こしたんだ」 告げられた言葉が、事実として受け入れられない。 でも、否応なしにわからせられてしまった。 彼女の身体が透き通り始めていたから。 「ヨルちゃんはね、私が事故で死んじゃった時と同じタイミングでマンションから落ちちゃったみたい」 その言葉に反応して霞に包まれていた記憶が蘇る。 共働きの両親が殆どいない伽藍洞の部屋に帰ってきて、そのままベランダから何かに吸い込まれるように落ちてしまった。 その後の状況は分からないが、どうやら私の身体は一命を取り留めたらしい。 「私がこの扉から出ていったら、アカリはどうなるの?」 その問いに彼女は答えず、寂しそうな笑顔をさらに深くしただけだった。 「じゃあ、わたしもここに残るよ」 「それはダメ。私はもう死んじゃった。でもあなたはまだ生きてる。なら前に進まなきゃ」 わかっている。 自分は駄々をこねているだけ。 なぜなら身体が徐々に扉のほうに引っ張られているから。 「あのね、アカリ。短い時間だけだったけど、アカリと一緒にいて本当に救われたの。あなたのこと友達と思ってもいいかな?」 目からは涙が溢れ出て、気が付けば嗚咽も止まらなくなっていた。 それでも、俯かずにジッと彼女の目を見つめる。 決して目を逸らさずに。 彼女は驚いた表情の後、ぐしゃりと顔を歪めて 「あったりまえじゃん!」 渾身のタックルを全身に感じた。 どれくらい抱き合っていたのだろう? 少しだけ、まだもう少しと弱音を上げる心に、自分で終止符を打つ。 「それじゃあ行くね」 身体が離れて、彼女の体温がなくなっていく。 彼女の泣きはらした、でも笑顔を瞼の裏に焼き付けて、自分の足で扉に向けて歩き始めた。 決して情けない、アカリが不安になるような姿は見せたくなかった。 一歩一歩、力を込めて足を踏み出していく。 扉の手前に辿り着いたとき、後ろから大きな声が響き渡った。 「ヨルちゃんの啖呵、超カッコよかったよ!」 振り返りそうになる心を必死に押し殺し、私も叫び返す。 「絶対、また逢おうね!!」 私は、真っ白なあかりの先へと足を踏み出した。
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