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【第1話】目が覚めたらそこは――
次に意識がはっきりしたとき私は知らない場所で目を覚ました。
どうやら洞窟?の中のようで、所々の松明がギリギリの光量を担保している。
頭が重い。
まるで霞がかかっているように記憶が朧気だ。
ちゃぷちゃぷという音で部屋の端にある小さな泉に気が付く。
透き通った水を目にして、頭しゃっきりさせるべく手ですくって顔にかける。
水面に映る顔を見て「しまった!メイクが!?」と一瞬焦るも、製品開発者の意地と努力の成果だろう、ウォータープルーフはその名に恥じない仕事をしてくれた。
改めて自分の顔をまじまじと監察する……軽くパーマのかかった金色のミディアムショートに、透明感のあるベースメイク。
膝うえ丈にまで巻き上げられたスカートに、つけまとカラコンも揃ったばっちりアイメイク。
いわゆる“ギャル”という奴と思われる。
自分で言うのも憚られるが、客観的に見て間違いなく“かわいい”。
化粧をした自分の顔に僅かな違和感を覚えたとき、思考は大声によって中断された。
「おっ、人いるじゃん!よかったぁー!!」
顔を上げると、部屋の唯一の出入り口から力強い足取りで近づいてくるおそらく同年代であろう制服を着た女の子がいた。
「いやー、マジでほっとした。目が覚めたらいきなり訳わかんなくてさー」
こちらの混乱を他所に女の子は言葉を投げ続ける。
「あ、ベラベラごめんね。ウチは日向アカリ!高二だよ。あなたは?」
「私は影山ヨル……あなたと同じ高校二年」
「……」
自己紹介を無言で返され、思わず不信の目を向けてしまう。
「なに?」
「あっごめん。いやちょーかわいいなぁって!」
「そんなこと言われたことないよ」
「ヨルってカッコいい名前だねー」
「嫌だよ。クラスメイトからは『スパイ漫画の人妻だ~』とかイジられるんだよ?」
「あっ、聞き覚えはそのせいかー!あはは、たしかにそれはウザそー」
からからと鈴を転がしたように笑う彼女は見るからに陽の雰囲気を発している。
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