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【第5話】尊重しあうは難しい
「これはたぶんだけど……」
エジプトモチーフであろう様々な人形がひしめいている中から、狗の被り物をした人形を台座に置く。
すると、控えめな地鳴りの後、軋みを上げながら扉がゆっくりと左右に割れていった。
「古代エジプトでは狗頭のアヌビス神が死者の守護神として崇められていたらしいの。だから……」
「なにそれ」
出会ってから初めて聞く底冷えするような声だった。
「ヨルちゃん最初からわかってたの……? ならもっと早く言ってよ!!!私死ぬところだったんだよ!?」
「それは……ッ!」
私に問いもせず勝手にやったんじゃないか!という慟哭は喉にしがみついて外に出ていこうとしない。
「ごめんなさい……」
スカートの裾を握りつぶし震えながらそう告げるのが精一杯だった。
アカリさんはハッとした顔のあと、絞り出すようにごめんと告げて新たなドアに向かって歩き始めた。
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