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【第6話】鉛のような空気の中で
会話もなく、静かな洞窟に人間二人の足音だけが一定のリズムで刻まれていく。
片方の足跡が急に止まり、俯いていた顔を恐る恐る上げると、アカリさんがばつの悪そうな表情を浮かべている。
「あのさ」
「うん」
「さっきはごめん」
「……うん」
「聞いていい? さっきはどうして何も言い返さなかったの?」
「怖いの」
「怖い?」
「自分の意見を言うのが怖い。高校でずっとイジメめられてるんだ。昔は言い返したりしてたんだけど、何を言ってもケラケラ茶化されるだけ。それが嫌で怖くて、気が付いたら何も言わなくなってた」
思い返せば、きっかけは他の子が弄りという名のイジメにに「やめなよ」と声を上げたことだった。
それからは対象が私に移って、気が付いたら最初にイジメられてた子もその仲間に混ざって私を弄る側にまわっていた。
その時にわかったのだ。
声の大きい人に逆らうような意見を言えば、その瞬間から排斥が始まる。
だったら、自分の主張なんて何も言わずに人形になっている方がマシ。
特殊な状況だからだろうか?
両親にも話せていない自分の恥部を、出会っていくらもない他人に吐露していた。
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