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【第8話】ソロプレイ
テンションが落ち着いた私たちは次の広間に辿り着く。
先ほどの部屋では明確に命を奪おうという殺意のある罠が存在した。
どこかピクニック気分だった気の弛みは引き締められ、注意深く行動するよう二人で示し合わせる。
「さっきみたいに扉はあるけど他は何もないねー?」
地面を這って調べまでしたのに、やはり結果は芳しくなかった。
二人して部屋の中央で頭を捻っていると……小さく何かが軋む音が聞こえた。
その音は徐々にリズムを短かくしながら断続的に続いていき、音の出所を探って上を見上げた瞬間。
「危ない!!!!」
横からの強い衝撃で弾き飛ばされ、世界がゆっくりに切り替わる。
カメラが引くように視界が広まっていき、最後に映ったのは天井から落ちてきたであろう様々な大きさの岩やタイルと、両手を突き出したポーズでどこかホッとしたような表情をしたアカリだった。
轟音とともに岩煙が巻きあがり、世界の速さが元に戻る。
地面に倒れこんだ痛みも忘れ唖然としてしまう。
「アカリ!」
煙が晴れるのも待たず、手が傷つくのも厭わず瓦礫をかき分けると、頭から血を流し意識を失っている彼女を見つけ出すことができた。
幸いなことに頭部以外の目立った怪我は見られないが素人診断に過ぎない。
進むか、立ち止まるか。
人の生き死にに関する決断を、自分ひとりで決めなければならない。
そのことに気が付いて身体の震えと冷汗が止まらなくなる。
「私が何したっていうの……」
涙は目から溢れだし、嗚咽を漏らしながら弱音が口からこぼれ出る。
しかし、頭の中の彼女がそれを許さない。
もし逆だったら彼女はどうするだろう?
活力に溢れ、バックのギアを忘れてきたような子だ。
きっと這ってでも前に進もうとするだろう。
乱暴に目元を拭い、頭に包帯代わりにブラウスを巻いた彼女を背負い扉へ向かう。
たった一人で再び道を進み始めた。
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