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「身体から出た黒い感情が寄り集まって、暗く細い線になる。これってどういうことかと考えたんです」
「それはつまり……感情を作り出す心と、それを収める器である身体、互いをつなぎ止めている境界線だとでも言いたいのか」
疑いつつも、要旨を口にする。
同意を得たと思ったらしく、青年は満面の笑みを浮かべた。
「そうです。身体から湧いて出たんだ。なにか意味がある。だから絡まった紐を解いてみたくなったんです」
「そんなことができるはずがない」
「もしかしたらどこか未知の、向こう側へ行けるかもしれない。きっと、解放される」
「そんなわけがないだろう」
「当然、そう思いますよね」
あれは、部屋の隅に集まると絡み合い、どんどんくっついて、縒り合わさって紐みたいになっていくんです、と語る。
「表面が、固い鱗みたいに見えるんです」
手に取ったしぐさで、両手を凝視している。
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