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「家にいる連れ子が思うように触らせてくれなかったから、我慢できなかったって自白したんですって」
ふと下を向いたと思ったら、肩が震えている。感情が抑えきれなくなって泣き出したのかと思った。
なだめようとしたら、含み笑いが漏れ聞こえてきたので驚いた。
「馬鹿ですよねぇ、そんなことを大人が言うなんて、当時の子ども心にも信じられないですって」
ひとしきり声を立てて愉しげに笑い、目尻を拭くと大きく息を継いで吐いた。すうっと真顔になって、続ける。
「で、死んだんですよね、そいつ」
そこまで言って、口をつぐむ。嫌な気配に背筋が冷える。
「死んだって、どうして……?」
「電車に飛び込んだんですよ。自殺です。単に警察に捕まった自分が無様すぎて、許せなくなったんじゃないでしょうか。つくづく迷惑な奴ですよね」
でもね、と小さくため息をつく。
「死ねば終わりなんて、ずいぶんと安易だと思いませんか」
黙るしかなかった。不足な言葉を言い連ねても意味がない。
「いいんです。そんなことはどうでも。まだ先があるんですから」
「……なにがあったんだ」
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