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「母の態度や言動は、無言で僕を責め立てるものでした。僕が我慢すればよかった。そうすれば、母はあんなふうにはならなかった。だから僕は自分を責めて、責め続けてわかってしまったんです。母は自分のことばかりだ。自分の幸せを一番に考えてる」
「それは──」
言葉にしてはいけない。なのに青年は、揺るぎない推測にたどりついてしまっていた。
「最初から、僕はいらなかったんだ」
「違う!」
大声で否定していた。
「そんなわけがないだろう、働く間にひとりで留守番させるのが心配とか、寂しくないようにとか、親心があっただけだよ。そもそも要らないなら、我が子を引き取ったりしないだろ?」
「嫌がらせ、だったんです」
迷いなく断じ、悟りきった笑みを浮かべる。
「母は、父が欲しがるものを最後まで渡したくなかっただけなんですよ。だから離婚後は我が子の顔を見なくてすむように祖母に預けたし、引き取らざるを得なくなった後は、躊躇なく新しい男をつかまえるために利用した」
男児への性的な興味を持つ男に、母親が惚れるとは思いがたい。そこまで疑うのかと胸が痛んだ。
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